file.08 中村拓朗

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先月末、5月26日から29日にかけて、2016年のナショナルトレセンU-14のトレーニングキャンプが静岡県にて開催された。北海道からは18名の選手とともに、JFAトレセンコーチでもあるアカデミーダイレクターの北原次郎、そして北海道地域トレセンスタッフを代表してU-15コーチの中村拓朗がサポートで参加した。「トレセンのキャンプがチームでの遠征と決定的に違うところは、常に個として評価されること。また普段は対戦することしかない外の選手と一緒にトレーニングするという経験によって、ひとりひとりが個人としての自分の位置を肌で感じることが出来る貴重な機会。特に北海道の子にとって、こういうところに選ばれることのメリットは大きい。」ナショトレの意義について拓朗コーチはそう説明してくれた。ピラミッドの頂点を目指す、個の戦いの場。「うちはJの下部組織だし、育成の目的はプロとして通用する選手を輩出すること。チームとして勝つことも大事だけど、最終的に問われるのは個としての評価。僕自身も今回ナショトレのキャンプを通して、もっと個人を伸ばすということを意識して、指導者として質を追及していかなくてはいけないと改めて思いました。」
そこには、かつて同じくコンサドーレでプロを目指した自分自身の想いも重なる。設立されたばかりのコンサドーレ札幌U-18の3代目のキャプテンとして、2001年の日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会でチームを準優勝に導いた。しかし、トップへの昇格はならず、大学へ進学。「チームとしては良い成績を残せたけど、じゃあ自分自身には何が残ったんだろうって。個人としてもっとやるべきことがあったんじゃないかと後悔しました。」もちろん試合に勝つことでしか得られないものもある。選手には、勝たなくてもいいとは絶対に言わない。だけど指導者としては、目先の勝利を追求することが最優先ではない。5-0で勝っても、選手個人がその試合を通して成長できなければ意味がない。「そこはすごく難しいところですけど、指導者と選手が同じ方向を向いてイメージを共有していきたい。」
北海道の選手は内向的でなかなか外で力を発揮できないと言われる。「だけど、みんなサッカーが大好きだし、一生懸命チャレンジしている。僕たち指導者も、そんな選手たちを引き上げていけるようにスキルを身に着けていかなくてはいけないと思っている。」
北海道の持つ地理的なハンデは選手にとっても指導者にとっても重い。しかし考えようによっては、ここからはすぐにでも海を渡れる。大きな舞台で力を発揮できる強いメンタルを持つことで、世界はぐっと近くなる。「ナショトレに選ばれることは最終目的ではないけれど、選ばれたことによって自信をつけて、またそこで得た経験によって高い意識を持つようになる。ひとりでも多くの選手がそういった機会を生かせるようにしていきたい。」
最後に、拓朗コーチはこう言った。「オール北海道から世界へ。」クラブの指導者であると同時に、北海道地域トレセンのスタッフとして。いつかここから松山光が羽ばたいていくことを期待している。
(※この原稿は6/13のV.ファーレン長崎戦のマッチデープログラムに掲載されたものの転載です。)

*掲載時には長すぎて全面カットとなった秘蔵エピソード*

実は拓朗コーチにはプロになって叶えたかった夢があった。「ちょうどトップが昇格した年でユースにも取材が来て。僕、『トップに上がって野々村選手とダブルボランチを組みたいです!』ってインタビューで言ったのを覚えてます(笑)」同じボランチというポジション、背番号も同じ7番。その強烈なキャプテンシーとプレースタイルに憧れ、野々村の履いていた赤いスパイクを親に買ってもらった。「大好きでしたね。今まで誰にも言ったことなかったけど(笑)」指導者として再びクラブに戻ってきた時、「契約書の自分の名前の横に『野々村芳和』と社長の名前があって、おぉーーーって思った!」と笑う拓朗コーチは、かつての拓朗少年の顔になり、それまでのどんな話題よりも饒舌なのでした。

中村拓朗 NAKAMURA Takuro

【選手歴】
江別ユニオン → ユニオンジュニアユース → コンサドーレ札幌U-18 → 道都大学
【指導歴】
クラブフィールズU-15/18コーチ・監督 → 2014~コンサドーレ札幌U-15コーチ

2015年OB戦の写真。プレースタイルは現役時代と変わらず「野々村似」でした(笑)